事務所通信

令和6年4月

シリーズ:中小企業の資金繰り⑤

申し訳ございません。今月は休刊とさせていただきます。

令和6年3月

シリーズ:中小企業の資金繰り④

前回に引き続き資金繰りの影響についてサプライチェーンの上流から見ていきます。今回は決済について考えます。


余計な在庫を極力持たない仕組みがあるとして、購買・資材担当がすべきことは、①検収・検品のタイミングを明確に記録する、②決済のロットをまとめる、③サイトをこまめに設定する、です。オーダーしたものは手元に届いてその数量・品質が確認されてから仕入れ計上されているはずですが、仕入れ先は出荷基準で売上計上(及び請求)してきますので、それに対してこの手続を記録して明確に仕入れ先に説明できるようにしておくべきです。次にロットに関しては、たとえば発注の単位ごとで決済するか一定期間をまとめるかという問題があります。一般的に発注単位ごとだと売り手に有利で、一定期間くくると買い手に有利になります。今の日本は低金利なのであまり議論になりませんが、金利上昇時は運転資金の平残を見るとこの差は大きなものになります。そして支払いのサイトについては各業界で慣習があると思いますので一概には言えませんが、すべての仕入れに同じサイトを適用するのではなく、たとえば基本素材(木材、金属、化成品など)、包装材、薬品、塗料など分野ごとに設定することも有効です。

次に大きな運転資金投下先である在庫について考えます。生産担当がすべきことは、①極力製造途中の状態(いわゆる仕掛品)にしない、②検査は迅速に完了させる、です。工程が長い場合とくに後工程における仕掛品はたくさんの原価を吸い込んでいるので膨らんでいます。すなわち多くの資金を固定化している状況にあります。できるだけ仕掛状態に置かない工程管理が望まれます。そしてこれに続くのが品質検査です。検査工程でパスしないとやはり仕掛品扱いになります。また検査が追いつかないで仕掛在庫がたまるケースもあります。いかにReady to sellの状態にもっていくか、が工場内で問われる資金管理と言えます。

次回はサプライチェーンの下流に移っていきます。


令和6年2月

シリーズ:中小企業の資金繰り③

前回まで資金繰り(というか商い)の基本を見てきました。今回から個別論点を探っていきます。すでに触れたように受け取りは早く、支払いは遅いに越したことはありません。これは会社が儲かっているかどうかに関係ないことです。そこでひとつの視点としてサプライチェーンの上流から下流までどこで資金繰りが関係しているかを見ていきたいと思います。いちばんわかりやすいのでオーソドックスに製造業で考えてみましょう。生産設備の存在を前提とすればスタートはやはり購買・調達活動になります。ここで議論の対象となるのが、①購買の時期・タイムスパン、②購買のロット、③決済の時期です。


企業のビジネスモデルや属する市場の特性にもよりますが、購買が単独で意思決定することはなく販売とリンクしているはずですのでもっとも効率性のいい購買はもちろん販売機会の直前に行うことです。しかし製造時間や物流時間を考慮すると一定のタイムラグをみて早めに仕入れていると思われます。いわゆる加工リードタイムの議論ですが、いかに無駄のない購買をするかが重要です。大手企業では独自のシステムで販売計画と購買計画を綿密に調整していることがありますが、それでもブレが生じてうまくいかないものです。「新鮮な」素材を使って「生きのいい」製品を販売することは企業の品質維持には重要なことです。入ったものが遅滞なく出ていくサイクルは資金効率のみならず企業活動全体を活性化させます。

これとともに重要なのが購買のロットです。上記のようにタイミングがドンピシャであっても販売のロットと合わない購買をしてしまうと原材料の在庫が発生してしまいます。しかし通常はいわゆる欠品のリスクを避けるためあえて余らせてもいいように買っていると思われます。また過剰仕入れを避けるため小ロット購買をしている企業もあります。しかしあまり小口で高頻度の購買をするのも取引先に負担を強いることになり逆に管理コストがかかってしまいます。

このように購買のタイミングとロットをバランスよく決めるのは非常に難しい問題です。

次回は決済の時期について考えます。

令和6年1月

シリーズ:中小企業の資金繰り②

ビジネスにおける取引条件すなわち代金の受け取り、支払いの約束は一度取引が開始されて流れ始めると意外と見直す機会がないものです。お互いの信頼関係も醸成されてくるので無理もないところですが、いくつか気を付けたいことがあります。

①当初の約束からずれてきていないか

金額の大小や日数の長短に関わらずきっちり決済が行われているか、確認しておきましょう。日本はずっと低金利ということもあって意外と決済日までの金利の概念が甘くてほっておくとどんどん日数がずれてきます。海外では家庭の電気代の支払いでも奥さんは一日でも遅くしようとします。

②ずれにちゃんとした理由があるか

他の要因と一体で変更が許容されているのか、たとえば単価をオマケしてもらっているから決済は緩くしているとか、はきちんと確認してきましょう。大事なのは経済合理性です。

③管理不能な要因がないか

たとえば業者の都合で役務提供の完了が見通せないとか、役所・行政に委ねられて手続き待ちになっているとか、天候に左右されるとか、輸出取引で先方の事情がわからないとか、自分ではどうにもならず決済日が予測できないような状況もあるかも知れません。その取引が会社全体にどれほど重大かを把握しておくとともに、そのリスクをヘッジする方法を考えたいですね。

④受け身(不作為)になっていないか

どんな取引でも相手任せはよくないですね。取引先に対して「当社はきちんと管理している」という見せ方は重要だと思います。取引はお互い様なので相手の協力を引き出すことも必要です。

次回も資金繰りでお付き合いください。

本年もよろしくお願いいたします。


事務所概要

事務所名西浩明公認会計士・税理士事務所
所長名西 浩明
所在地〒272-0835
千葉県市川市中国分3-10-16
電話番号080-2259-2244
FAX番号047-373-0213
業務内容
  • 法人税、所得税、消費税の申告の支援
  • 資産の購入、譲渡に関する会計・税務の事前相談
  • 資金繰り、利益計画に関する相談、指導
  • 事業の法人化に関する相談
  • M&Aや事業再編の検討、実行支援
西浩明公認会計士・税理士事務所は
TKC全国会会員です
TKC全国会
TKC全国会は、租税正義の実現をめざし関与先企業の永続的繁栄に奉仕するわが国最大級の職業会計人集団です。

 千葉県税理士会